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所謂雑記以下。表の裏に屑は掃き溜められて行くのです。Dust to Dust. 誰も読まないだろうからここにぐだぐだと長い文章を書いて見ました。
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沈黙の国。前。
昔だったり、未来だったり。
近かったり、遠くだったり。
いつともどことも知れない、時間と座標に。
沈黙の国が在りました。
そこの人達は、喋ることを知りませんでした。

彼らは言葉を口にする必要はありませんでした。
口にしなくても、伝わったからです。
音が無くても、声が無くても、
彼らの心と心は繋がっていました。
頭の中で、胸の中で、会話ができたのです。

別に、考えていることが全て筒抜け、というわけではありませんでした。
伝えたいことは選べます。心を閉じれば覗かれません。
慣れてしまえば、少しくらい、嘘だって伝えられます。
ただ、彼らは言葉を口にしないだけで、
私達と変わらず、意志疎通していました。

それでも、心が伝わるのですから。
誤解もなくて。
一度に色々伝えられ。
景色も音も温もりも共有できて。
お互いの痛みや悲しみすらも伝わりました。

「ねぇ、今日とても綺麗な夕焼けを見たの」
「それは素敵だね。どんな夕焼けだったの?」
「こんなよ」
「わぁ、綺麗! 感動した君の気持も伝わってくるよ」
「私を受け入れてくれる貴方の気持ちも伝わってくるわ」
「世界は素晴らしいよね」
「ええ、幸せに満ちているわ」

言葉にならない心が、正しく迅速に共有されて。
独りになることなんてなくて。
彼らは、おおかた幸福でした。

けれどもある日。
唐突に。
彼らは心の共有ができなくなってしまいました。
人々の心は沈黙し。
沈黙の国には、意味を成さない声があふれかえりました。

(どうしてわかってくれないんだ)
(この人は一体何がしたいの?)
(苦しいのに、悲しいのに、助けてくれる人がいない)
(嫌だ。寂しい。独りぼっちは、嫌だ)
(怖いよ。あの人達は何か企んでるんじゃないの)
(私以外の人は、みんな通じてて、私は、もてあそばれてて……)
(こんなに自分は辛いのに)
(その辛さを誰もわかってくれない)
(助けて)
(おいていかないで)

わけもわからず。
混乱して、取り乱して。
恐怖に怯えて、狂って叫んで。
よろめいて、くるめいて、回って、絡まって、
わめきながら、涙を流して、落ちて行く。
誰もが、不安にまみれ、疑心暗鬼に陥りました。

そんな中で、彼と、彼女は出会い、戸惑い。

泣きだしそうな表情で。

震えながら手を伸ばして。

お互いに、握りあって。

そうして、目を見つめあって。

やっと。

静かに、微笑みあいました。

わずかだけど、伝わる心。
こんなになっても、私達は、独りじゃない。
言葉は、要らない。

二人は、幸せな心地になりました。

(続いたり)

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